(アップデート:2019年の記事に2021年9月加筆したものです。)
「パペットを使ったコマ撮りアニメーション」に関するフォーラム
というなんともキンキンに焦点が絞られたフォーラム in Poland.
ポーランドのŁódźという町で、「パペットを使ったストップモーションアニメーション(コマ撮りアニメーション)」に特化したユニークなイベントAnimarkt Stop Motion Forumというイベントが毎年開催されています。
2019年度、ここ数年スロバキアのプロデューサーSuperfilmと共にすすめている短編アニメーション映画の企画で私もこのフォーラムに参加してきました。とってもよかったので、この5日間からのミニレポート。
開催されるのはポーランドのŁódźという町
ロッズ?ん?ちがう?
Łódź=ウッチ!!?
待って、やっぱりどうしてもこのスペル「Łódź」とその音が関連づけられないっ。発音難しすぎ〜。
ウにもチにもなり得そうな単語一個も入ってませんやないか〜。
という難しい発音の街。ポーランド第三の街とのことです。歴史的にフィルムの制作が行われていた場所で、近頃ではポーランドのストップモーション制作が盛んな街だそう。
そういえば、かれこれ5年間一緒に制作をしているスウェーデン人の映画監督David (David Aronowitsch)もこの街で映画学校に行ったと言っていた。
昔はパワープラント、そして現在は科学技術センターに変身を遂げたEC1が会場。
雨降ってたのでほっかむりのようになっていますが。ハッピーです。
これが会場。なんと美しい。
中も面白いつくり。ここはカフェです。
「ピッチ」とは、プロジェクト売り込みプレゼンテーション
ピッチとは一言で言うと、ぎゅっと短時間にまとめた企画売り込みです。どうやら映画制作やゲームの世界ではお馴染みの工程らしいのです。
映画プロジェクトのプロデューサーを探したり、資金調達であったり、未来の仲間を集ったり、自分のプロジェクトに必要なものをゲット!しに行くショートプレゼンテーション。
大体今までヨーロッパで見たり、実際に経験したりした映画プロジェクトのピッチは、会場で観客の前に立ち、スライドを使いながら10-15分で行うものでした。
あちらでもこちらでもコマ撮り盛りだくさんの5日間
5日間にわたるこのイベントの内容をちょこっとご紹介すると、”パペットを使用したコマ撮りアニメーション” 映画のプロジェクトピッチから、人形コマ撮りアニメーション業界の巨匠を講師として迎えたコマ撮りアニメーション短期実践コースや、コマ撮り撮影でのライティングのコツを教えてくれるシネマトグラフィーコース、現役バリバリの超人気アニメーターの方のトークイベントやら、映画制作のファイナンシングについてのプレゼンテーションや、共同制作のコツについてのプレゼンテーション、朝ごはんと共に開催されるセミナーなどなど、あれもこれもと盛りだくさんの内容が建物のあちこちで行われていました。
写真は、パペットのコースを廊下からチラ見した時の写真
そして、映画マーズアタックのアニメーターの方が講師だったようです
あれもこれも、まさにコマ撮り盛りだくさんのイベント内容なのですが、私とプロデューサーのVeronika Kocourkovaは、現地到着ホヤホヤから最終日ピッチ本番ギリギリまで、ホテルもしくはイベント会場内のカフェで、ウンウン唸りながら我らの企画をデベロプさせ続け、メンターの特訓やフィドバックを受け、帰国後には声が出なくなっていたぐらいに朝から晩まで練習しており、他のイベントにはほぼ参加する時間の余地も心の余地もなかったのでした。。。
そしてもちろん、イベントですもの、日が暮れる頃からは、夜な夜なパーティーや上映会が始まる。そこではアニメーションに情熱をもった人たちが集まりワイワイ楽しい交流が行われるのです。
ううう、、、なんという誘惑。。。
本来ならこういったパーティーには片っぱしから顔を出して乾杯したいところ。
だがしかしっ、ベロニカと私、我々には使命があるっっっ。くうっ。
チラッと顔を出し、コンバンワコンバンワしてからホテルへ直帰、ペットボトルをマイクに見立てて練習の続き。
いつでも、どこでも、道を歩きながらでも、練習していました。
さらに自分たちに負荷をかけるべく、常に録画しつつ練習しました。
ストレスレベル爆上がりです。
夜な夜な開かれるパーティーに目もくれず、私たちの大好きなビールにも手をつけず、朝から晩までとことん超集中でがんばりました。
聞くところによると、他のピッチ参加者たちも、同じく本番が終わるまではホテルの自室に缶詰で最終のツメをする日々だったようです。
そして迎えた最終日
これがプレゼンテーション当日の発表会場への道。
その道がなんかギラギラしてるの
やめてよ、余計ドキドキするやんってぐらいドラマチックでしょ。
私たちの番が来た
ピッチはコンペティション形式で、私たちのピッチは今回は残念ながら受賞することはできませんでしたが、そんなの関係ないっ!学ぶことが多く、本当に感謝してもしきれない経験と、この濃厚期間に、前述した皆様のwisdomとサポートを受け、私たちはプロジェクトを予想以上に大きく進ませる事ができました。
Animarktのピッチイベントは「ピッチ+デベロプメント」の短期集中スパルタ高等教育でありました
このAnimarktのピッチイベントの素晴らしいなと思う点は、企画をピッチする機会を与えてくれるだけでなく、その準備期間中に、脚本、効果的な発表方法、人前での話し方のコーチングなど、色々な方面のメンターをそれぞれ用意してくれ、我々と我々の企画をビシバシとことん鍛えてくれる事にあると思います。
まずは、ピッチイベントにアプライして選ばれる事が第一歩。そしてその後はピッチの1−2ヶ月前ぐらいから、脚本のメンターがオンライン個別で脚本のアドバイスをしてくれるところからはじまります。現地に到着してからも、ピッチ本番まで毎日1日1回は各分野のメンターとのマンツーマン個別特訓が用意されていました。
メンター達と、自分の企画について話し合い、意見をもらい、色んな方向から自分の企画を見つめ直し、ピッチの内容を練り直し、本番直前には実際の舞台でピッチコーチと共にピッチのリハーサルと最終調整もさせてもらえる。とってもハードな集中ブラッシュアップ期間が用意されていることで、自分たちの企画を発展させる濃厚時間が生まれる。
そして当日、ピッチをしてアドレナリンが大放出したまま、向かいの別ビルに会場を移し、更に3人のメンターからの個別フィードバック&アドバイスの機会を用意してくれている。
ピッチ後のメンター達とは、脚本、パペット作りのアドバイス、ファイナンシングのアドバイスのプロの3方でした。
素晴らしいわ、運営者momakin! 前後ともにサポートバッチリ!なんとぬかりない学びの流れなのでしょうか。
ヨーロッパの映画制作の過程を実践で一歩一歩学ばせてもらっている
驚くことに、ヨーロッパにはアニメーション映画企画専門のピッチトレーナーがいる。この人たちは、フェスティバルからフェスティバルへと転々としながら私たちのような迷える子羊達とそのプロジェクトを助けているらしい。
ヨーロッパでは、そういう職業が成り立つほどに、「ピッチ+デベロプメント」とセットで提供してきた歴史があるようです。素晴らしいですね。
私はヨーロッパに長年住んでいる。スウェーデンでアート系の学校に行き、近年までヨーロッパをうろうろしながらアート系のコンテクストで活動してきたため、映画制作の教育もバックグラウンドも何も無い。なので、数年前からスロバキアのプロデューサーSuperfilmと組んですすめている短編映画制作の過程の何もかもが新しく、学びの連続で、そして自分は何もかも未熟だとひしひしと感じる。
一本の短編を作る過程で、いろんな事を実践で学ばせてもらっていっている感じ。ありがたや。こんな私を辛抱強くサポートしてくれるプロデューサーやこのようなチャンスをくれる方々に本当に感謝です。私頑張る!
ちなみに、ヨーロッパのアートやフィルム系の分野では、イベントや団体など、女性の運営者がトップでリードしている会社が多いな〜という印象。そしてこのフォーラムを運営しているMomakinは3人の敏腕レディで、彼女達はとてもカッコイイのです。私のプロデューサーSuperfilmも4人全員女性。ヨーロッパっていつからこんな感じなのかな?今度聞いてみよう。
Veronikaと私。ピッチ後。
大通りの、お菓子のような建物。大通りにはこんな華やかな建物があった。
会場の中から
会場建物の裏側もかっこいい
この赤煉瓦と、ちょっとくすんだ青のカラーコンビネーションが最高。
↓多分こうゆう建物をリノベーションして、今回の会場の建物のようにしたのだと思う。
スロバキアのコシツェでアーティストインレジデンシーをしていた時の建物も
元々は軍隊の寮をリノベーションしてモダンでしかも広々としたスペースにしていた。
こういう夢のある素敵リノベはここら辺のヨーロッパではよくあるのかもしれない。
私、結構好きなんですよね。こういうボロボロの建物眺めるの。
なにかと怖いことが起こりそうなので中に入りたくはないけど。
さて、もうちょいアップにして↓
こういう凸凹した、均一でない窓を見るとなぜかワクワクする。
あと、剥がれてレンガが見えてる壁も好き。
夢が広がる。
あともう一個ヨーロッパの街で観察するのが好きなのが、
こういう門の脇にある車よけ的な銅像。
健気だねぇ。膝ついてる姿勢までちゃんと作ってある。痺れる〜。
今回のようなイベントに来ると、ヨーロッパの他の国で開催されていたワークショップやフェスティバルで友達になったアニメーション友達と、アポなしで会うことができ、また一緒に時を過ごすことができるのが、ヨーロッパのアート界の楽しいところだなと思います。
きっと他の分野でもそうなんじゃないかなと思います。
国と国がすっごく繋がってる。
好きなことで繋がってるんだなと思うと、この先の将来もいい関係を続けれたらいいなと、楽しみになります。
このフォーラムの後の日程で、日本でのアニメーションワークショップのイベントのお仕事をいただいていたので、自分のピッチが終わった瞬間に、スーツケース掴んでタクシーに飛び乗って空港へ向かわなければならず、本当に残念なことに、わたくし、参加者みんなでのセレモニーディナーに参加できなかったんです。
ひゃー。
その代わりにがっつりいっぱいハグして来ました。またすぐ会おう!と。
台風直撃
そしてこんなに急いで飛行機に飛び乗ったのに、ちょうど秋の台風が日本に直撃して、
東京への飛行機が飛ばず、経由地のカタールで1日過ごすこととなったのでした。
予期せぬカタールのグルグル散歩が思った以上にインディージョーンズでした。
その話はまた。
Thanks Superfilm! Thanks Veronika!
Thanks Animarkt and Momakin!
追記。この記事のイベントは2019年度のフォーラムでしたが、コロナが起こってからはオンラインで行われているようです!
それではまた!
薫